我が校のアイドルは可愛い可愛い女の子、ではなくて可愛い可愛い男の子だ。とは言っても、三年になって一年の時よりも身長が伸びて可愛らしい顔から少しだけ男らしい顔になるとかっこいいという言葉のほうがしっくりしてきたんじゃないかと思う。
だけど、まだまだセーラー服姿は健在でその姿は学校の名物と言っても過言ではない。
それに、男らしくなったと言ってもセーラー服を着ている姿はまるっきり女の子。そこらへんの女の子とは比べモノにならないくらい可愛いんじゃないだろうか。
現に女の子だけでなく、男の子だって彼に夢中になってる人だと噂で聞いたことがある。
そんな石川くんは自分の可愛さを鼻にかけるようなことせず、何をしても人の目を惹きつけて、誰にでも優しい。
クラスでもいっつも笑っていて、みんなの中心にいる。男の子でも女の子でも相手がだれであっても代わらない態度に、私が恋に落ちるのは時間の問題だったようだ。
三年になって同じクラスになってもうすぐ半年。そして石川くんに恋に落ちて早くも半年がたとうとしていた。
ちなみにその間の進展なんてまったくもってない。誰にでも話しかける石川くんが何回か話しかけてくれたことがあるものの、私からなんて皆無に等しい。その上、折角石川くんが話しかけてくれても、恥ずかしくて中々思ったような返答もできなくて、もどかしくてどうしようもない毎日が最近は憂鬱で仕方がなかった。
好き。だからこそ、思ったように行動できない。
そんなもどかしい日々が続き、いつの間にか季節は秋となっていた。文化祭の準備に終われる中、まさかの展開に私は言葉を失った。
まさか!まさかこんなことになるなんて!嬉しいことにもかかわらず、心の底から喜べないのは彼と二人っきりになると緊張してしまうからだというのはもう分かりきったこと。手元にある赤い印のついた割り箸を信じられない様子で私は見つめながら、心の中は言葉にならない言葉で埋め尽くされていた。
視線をずらせば、倉田くんと話している石川くんが目に飛び込んでくる。
他のクラスメイトがまったく印のない割り箸を持つ中で同じ印のついた割り箸。しかし、石川くんの手にある割り箸には私と同じように赤い印があった。
「ひろー、俺当たっちゃったみたい」
「へぇ」
聞こえてくる会話に口端が緩むのがとめられない。
「じゃあ、二人は買出しよろしくね」
女子の学級委員の声が響く。倉田くんと話していた石川くんはおどおどとしている私と目が合うとまるで安心させるかのようにニッコリと笑った。
高鳴る胸に思わず、視線をずらしてしまいたくなるのをこらえて、石川くんの目をまっすぐに見る。
もしかしたら神さまって本当にいるのかもしれない。
なんとも自分の単純な思考に呆れてしまいそうになったけれど、でもそう思わずにはいられない。
片思いの相手と、それも二人きりで文化祭の買出しに行けるだなんて、恋する乙女だったら誰だって思うことでしょ?
「よろしく、さん」
「う、うん!」
石川くんの呼んでくれた私の名前が心の中で何回もエコーされる。まるで宝物を手に入れたような気持ちになってしまうのは、ただ石川くんが私に微笑んでくれるだけで、ただ私の名前を呼んでくれるだけで、胸が満たされるような気分になるからかもしれない。
やっぱり、大好きだ。
改めてそれを思い知らされた気がしながらも、ぎこちなく私も石川くんに笑みを返した。今日はいつもと違ってセーラー服を着てないからか、かっこよく見えて仕方がない。
羨ましい、と零すほかの女の子たちに優越感をちょっとだけ感じながら、私は石川くんと一緒に文化祭の飾り付けに使う材料の買出しに学校を出た。
さりげなく重い荷物を持ってくれる石川くんのおかげで、私の荷物はかさばるけれど見た目ほど重くない。それにさりげなく車からかばってくれる石川くんはきっと女の子の扱いになれているんだろう。
会話だって、最初は緊張して全然話せなかったのに、石川くんが何気ない話題をだして私を楽しませてくれて今は普通どおりに石川くんと会話ができている。
今までずっと石川くんを見るだけしか出来なかった私にしてはかなりのステップアップに、私は心の中で歓喜していた。
でも、そんな中でも女の子の扱いになれている石川くんの一面を見るたびにチクリと心が痛む。
筋違いだとは分かってはいるのに、私と同じような扱いを受けたことのなる女の子に嫉妬してしまう自分が哀れに思えて仕方がない。
石川くんの彼女でもないくせに。ただのクラスメイト、のくせに。
あまりにも汚い感情に埋め尽くされたような気がして私は息を一つ吐き出した。
(それにしても女の子の扱いなれてるよ)
石川くんが誰かと付き合ってるなんて話、今まで聞いたことなんてない。
でも、聞いたことないだけで本当は付き合ってる人がいるとしたら?もしかしたら他校にそんな人物がいるとしたら?
少しだけ暗くなる思考。それを止める術を私はしらなかった。
「、さん?」
「えっ?!あ、ご、ごめん」
目の前に現れた石川くんの顔に、私はハッとして顔をあげた。あまりにも近い距離にいる石川くんに私の鼓動はどんどん、脈打っていく。
大丈夫?と首をかしげながら聞いてくる石川くんに誤魔化すかのように手を前に出して、上ずった声で大丈夫だよ、と繰り返す。
首を傾げる仕種がこんなに可愛い男の子がいても良いものだろうか。
(いや、絶対よくない!)
あまりにも心臓に悪い。一気に顔に熱が集まるのを感じ、私は片手で顔を覆った。こんな顔、石川くんに見せるわけにはいかない。こんな顔見られたら、私が石川くんのことが好きなことがバレてしまう。
「い、石川くんって妹さんがいるんだってね」
誤魔化すかのように出した話題に石川くんは今まで見せたことがないような顔で笑った。こんな石川くんの顔、初めて見た。
嬉しそうな、まるで花がほころんだような笑み。
いつからか、石川吾郎は妹を溺愛しているという話が学校の噂になったことがあった。それが事実だということを私は三年になって知ったのだけど、実際に彼のこの表情を見る限り溺愛しているのは間違いないことなんだろう。
誰にもで優しくて、誰にでも笑顔な石川くんが溺愛するという妹。少しだけ気になっていたけれど、まさかこれほどまでに溺愛しているとは思ってもみなかった。
「うん!めっちゃ可愛くて、めっちゃよい子なんだ!」
「そう、なんだ」
「ちょっとツンデレなんだけどね。ツンの割合のほうが多いような気がするんだけど、それでも本当可愛くてたまらない」
次々にでてくることばは妹さんを賞賛する言葉ばかり。彼から女の子と付き合ったなんていう噂がでない理由が分かった気がした。
きっと石川くんにこんな表情をさせるのは、妹さんしかいないんだ。
(あぁ、全部妹さんの為)
石川くんが女の子の扱いに慣れてるわけじゃなくて、妹さんへの扱いが自然と出ていたんだろう。
重い荷物を持ってくれるのも、自ら車側を歩いているのも、きっと。
笑みを浮かべたまま、話を続ける石川くんの表情はとても幸せそうに見えた。
私は、石川くんにこんな表情をさせることなんてできない。今の私は所詮、石川くんのただのクラスメイトに違いがなくて、きっと今のままじゃいつまでも、ただのクラスメイトのまま、だ。
でも、嫌だ。
クラスメイトのまま、で終わりたくない。
まだまだ諦めのつかないこの気持ち。何をしたら良いのかなんて全然分からないけれど、少しでも石川くんに近づきたい。
今は無理でも、でも、いつか。
少しでも石川くんの気持ちがほしい。
「ちょっとちゃんと聞いてる、さん?」
「うん、聞いてるよ」
口を尖らせて、不満そうな表情をうかべた石川くんに私は笑みを返す。そうだ。今は分からなくてもこの先、どう転がるかなんて誰にも分からないんだ。だから、今出来る最大限事をしよう。何もしないまま想うだけじゃ、何も変わらない。
それに、石川くんを想っていたことを後悔したくはないから。
先が見えなくて不安でも
(2009・08・20)
……OTL
すみません、本当これ何が言いたいんだな小説で(土下座)なんだか、自分のオリキャラで夢小説を書くのは凄く恥ずかしくて……途中でああぁあぁ!って発狂しそうな勢いでした。そのせいでなんだか吾郎はキャラが違うような気がしますし、そもそも吾郎目立ってませんし、 微妙な小説になってしまいすみません…!でも後悔はしてませ(ry
さまの苦情のみお受けいたしまぁぁぁす!(平伏 お題お借りしました→Theme
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