ボンゴレ学園と姉妹校であるミルフィオーレ学院はとても高貴な学校なイメージがある。真っ白な学ランと女子の制服なんて一体いくらしたんだろうと思ってしまうくらいに高そうだし、実際お金持ちしかいけないような学校だ。とは言っても、特待生度とかもあって中には生活レベルが私のような人もいるらしいけど。
だけど、その特待生度というのがこれまた難易度が高く年に一人いれば良いほうらしい。


正直そのぐらいレベルを高くしていることはケチくせぇと思わないこともない。


そんなミルフィオーレ学院とボンゴレ学園が姉妹校だということを知っているひとは意外と少ない。ボンゴレ学園は金持ちばかりか、と言われればそんなこともなく試験さえ通れれば誰でも通えるような学校だ。
学費だって私立ではあるがそこまで高いというほど高いわけじゃない。

だからこそ、私もこの学校を受験することにした。少し今となっては後悔しているような気も僅かにするけれど、生徒会入るまでは結構良い学生生活が遅れていたのだから文句は言えない。
あの時、生徒会の人たちに目さえつけられていなければ、もっと楽な生活をしていられたんだろう。



遠くを見つめながらそんなことを考えていれば、いつの間にか書類を書き進めていた手も止まっていたらしい。



思いっきりこちらを睨んでいる雲雀さんの姿が目に入る。自分はいつも喧嘩の仲裁
(という名の咬み殺し作業)をして人に仕事を押し付けているくせに、と思わないこともないのだがもちろんそんなこと言えるわけがない。それにこれ以上仕事がたまるのは自分自身困るので止めていた手をふたたび動かし始める。
でも、少しだけ理不尽だ、と心の中で不満げに呟いておいた。

しかし、何もせずに優雅に紅茶を飲んでいる六道会長が目に入った瞬間ためていたものが一気に爆発してしまった。人が!これだけ!必死に仕事をしているというのに、この人は!元はと言えば六道会長がためた書類なのだ、今私や沢田、他の人たちがやっている(もちろん雲雀さん除く)仕事は。それなのにあの態度、もうほおっておけるわけがなかった。


腹の底からこみあげてくる怒りをおさえきれることもなく、私は問答無用で持っていたシャープペンを六道会長のほうへといつの間にか投げつけていた。



「…こんのバ会長!!」

「えっ、ちょ?!」



驚きの声をあげながらも頭を横へとずらし、私が投げたシャープペンを優雅にかわす六道会長。結局シャープペンは六道会長に当たることなく、六道会長の後ろにある窓に当たりカシャン、と音をたてて下へと落ちた。
思わず私はそのことに対して舌打ちをこぼしてしまったのだが、私だけでなく獄寺も雲雀さんも同じように舌打ちをこぼしていた。

どうやらみんな考えることは同じらしい。


「どういうつもりですか!」
「どういうつもりもないですよ、無意識です」

「余計性質が悪いです!」

「惜しかったな
「今度は当ててみせるよ」


「ちゃんと僕の話を聞きなさい!」



いや、無理です。
ちょっと即答!どういうつもりですか?だから、無意識です。無意識なわけないでしょう?いえ、無意識のうちに六道会長に対する殺意がちょっと…殺意がちょっと、っておかしいでしょうが!おかしくないです、自分の仕事は終わってるのに人の仕事押しつけられたら誰だってそうなります、このバ会長。ば、バ会長?!それって僕のことですか……なんて、言い合いをしていれば雲雀さんがふと顔をあげて視線を生徒会室のドアのほうへとやった。

先週雲雀さんが壊したばかりのドアは六道会長が校長を脅し……お願いして今ではもう既に綺麗なドアが取り付けられている。
ちょっと壊れる前より豪華になったような気がしないこともないが深く追求すれば知りたくないことも知ってしまいそうなので何も気づかなかったことにしている。六道会長もそんな雲雀さんの視線に気づき、視線をドアへと移した。


そして忌々しそうな表情をつくるとぼそっと「面倒臭いことになりましたね」と呟いた。正直もうなっていることに気づいてもらいたい。面倒臭いことになりました?いやいや、すでにあなたのせいでなってますからね?!この人自覚がなかったのか。
そのことに怒りやら、会長に対する憐れみやらがこみ上げて来て、頭がいたくなった。



どうして、この人を会長に選んだボンゴレ学園。



そして、皆がドアへと視線を移した数秒後、コンコンとノックの音が室内に響いた。こんなところにくる人なんてほとんど限られている。一般生徒は生徒会室の出入りを禁止されているわけではないけれど神々しいとか何やら意味不明なことを言って寄り付きもしない。とは、言っても生徒会室を出れば女の子たちに囲まれている会長や他のメンバーを見れば矛盾している、と思うこともしばしばである。

校長先生だってここへは寄り付きもしないし、と考えていれば私たちの誰一人返事をしていないというのにドアは激しく音をたててあけられた。


((ノックの意味がないし…!))


多分ツナあたりも同じことを思ったんじゃないだろうか。私と同じように眉がよっていた。



「やぁやぁ、ボンゴレ学園のみなさんこんにちはー!」
「ちょっと白蘭さん?!ノックの意味がないじゃないですか!!」



派手な音と入ってきたのは白い学ラン姿の生徒が数人。それも、みんなキラキラしてるような気がする。ちょっと眩しすぎて目があけられないが、さすがに目を背けるなんて失礼なことができるわけないので目を細めて入ってきた人たちを見やった。
しかし、私の気遣いも虚しく雲雀さんは失礼だと分かっているんだろうに、思いっきり不愉快そうな表情を作ると顔を背けていた。



(・・・・・・まあ、雲雀さんが笑顔で歓迎なんてしてたらそれはそれで気持ち悪いけど)



ここらへんで白色の学ランと言えば言わずとしれた、あの学校だけしかない。現に見たことのあるこの制服はミルフィオーレ学園の制服で間違いないんだろう。だが、意味が分からない。ミルフィオーレの人たちがいきなり生徒会室に奇襲をかけてくるなんて何事か。それもニコニコと笑みをうかべて・・・・・・いるのは一番前にいる一人だけなのだけど。
そんな笑みを浮かべたミルフィオーレの人たちとは裏腹に六道会長は笑みを浮かべることもなく、雲雀さんと同じように嫌悪感丸出しの表情をうかべていた。
非常にぶっさいくな表情だったが、あえてそれを指摘することはしなかった。

まぁ、会長のファンにとったらこんな表情の会長でも魅力的なのかもしれない。


「やぁ。骸くん久しぶりだね」
「……何か御用ですか、ミルフィオーレ学院の方がわざわざこんなところまで」



友好的な態度を示す相手側とは違って、明らかに刺々しく対応する会長。一応、姉妹校の人たちが訪れているのだからもっと対応よくしなくて良いのだろうかと不安になってしまう。それがどんなに相手が、連絡の一つもなしで来たとしてもだ。
だが、相手は会長の態度なんてまったくもって気にした様子もなくニコニコとした笑みを浮かべたまま。少し気になるのがそのニコニコとした笑顔を浮かべた人の後ろにいる少年が胃のあたりを押さえて、眉根を寄せていることだ。なんだか親近感を芽生えてしまうのが抑えられない。
それはツナも同じなんだろう。ツナの視線も僅かに憐れむような色をうつし、その少年へと注がれていた。


「まったくつれないねぇ」

「さっさと用件を。そして、早くお帰りください」


そのあとに延々と続く言い争い。用件を、と聞く会長に対して、用件を言おうとしない相手側。見ているのもばかばかしいと私は先ほどの仕事に戻るために手を動かし始めた。仕事のBGMがなんとも不快だが、とめようがないのでしょうがない。
少しだけ眼鏡の少年が会長と言い争っている相手の名前を呼んでいるのも耳に入ってきたが、それでもエンドレスで言い争いは続いている。他の生徒会メンバーも興味を無くしたのか、各々仕事にもどり、雲雀さんは暢気に欠伸をしていた。




いつまで続けるのだろうか、と思い顔をあげて二人を見つめる。私としては早々に相手側にはお帰り頂いて、会長にも仕事をやってもらいたい。元はと言えばこれらの仕事は私たちの仕事ではなく会長の仕事なわけだし、会長にもする義務があるはずだ。
とは言っても残念なことながら言ってやるような人なら良かったのだが、会長のことだからこの人たちが帰ったとしても仕事に手を付けるかどうかは定かではない。

やればできる人なんだからやれよ。心の底から本気でそう思う。

会長が本気になれば必死にやっている私よりも断然早く仕事を終えることができるのに。はぁ、と思わずため息を吐けば会長と言い合っていた相手がこちらへと視線を向けた。
交わる視線に、相手がニコッと効果音がつきそうな笑みを浮かべる。
会長たちとはこれまた違ったイケメンオーラに思わず圧倒されるのを感じながらも、私もそれにつられるかのように笑みを浮かべた。多分、凄く引きつった不細工な笑みだったことだろう。
しかし相手はそんなことを気にした様子もなく笑みはそのままにこちらへと近づいてくると私の机の前に立っていた。


「きみが、ちゃん?」
「あ、まぁ」

「はじめまして、だよね?僕は白蘭。一応ミルフィオーレの生徒会長やってるんだ」


差し出された手に戸惑いながらも、自分も手を差し出せばボソッと会長が呟く声が聞こえた。


「本当に一応ですけどね」
「それは骸くんもだろう?」


あはは、くふふ、と笑顔なはずなのに空気はとても禍々しいものを感じる。沢田なんて、顔を真っ青にしながら必死に視線をずらし、他のメンバーもあまり興味がなさそうにしている。誰か助け舟でもだしてくれ、と思ったけれどこの中で唯一助けてくれそうな沢田のあの表情を見る限り助け舟を出されても、そのまま沈没してしまいそうな気がした。
それは白蘭、という人間の後ろに胃をおさえて眉を寄せている少年にも言えたことで助けを求めることも出来ずに私はそのまま黒い笑顔で、幼稚な言い争いを続ける二人から視線をそらした。
どうやらミルフィオーレ学院は私が思っていたよりも高貴なわけなく、馬鹿、と言えるような人物もいるのかもしれない。

いや、この場合はどこの学校も天才と馬鹿は紙一重、といったほうが正しいのかもしれないけれど。



「あぁ、もう良いからさっさと仕事をしてください!このバ会長二人組みが!!」




(え、バ会長って僕も?)
(だから僕はバ会長じゃありません!)




(2009・07・26)
タイトルがそのままやないかーい!……すいません、タイトルのセンスが皆無です(平伏)リクエストがボンゴレ生徒会VSミルフィオーレ生徒会だったのでこんな感じになりました。結局VSな感じはありませんが、会長同士はあまり仲が良くないようです(笑)


感想が原動力になります!→ 拍手