どうして俺が!どうして、どうして!!


目の前の現実から目を逸らしたくてもそんなこと優秀(自称)な俺の家庭教師が許してくれるはずもなく、俺は泣きそうになりながら目の前の人物を見据えた。この年で、それも男だというのに泣きそうだというのはなんとも自分の情けなさに嫌になることこの上ないが、そんなことは言ってられない。ボンゴレファミリーのボスにしてやるといわれて早数ヶ月。その間に得たものは確かに多いが、俺は段々と普通の人の日常というものからかけ離れて言っている気がしてならない。
本当になんで!!いや、今はそんなことはどうでも良いよ!!問題はこの目の前にいる女の子だ。違うクラスの女の子。どうやら山本と知り合いではあるらしいけど、俺にとっては初対面の女の子だ。なのに!「マフィアごっこにいれてくれ」って、何?!


「山本が楽しそうにしていたからな。私もやりたいと思って何が悪い!」


悪くは無い!悪くは無いよ!でも、可笑しいって事に気づいて!そして、獄寺くん、喧嘩は売らないで!!


「はぁ?テメーなんかがファミリーに入れるわけねぇだろうが。馬鹿は山本一人で十分なんだよ」
「私、別に馬鹿じゃない」
「はは、ってばこの前のテスト5番以内だったぜ?」


「うわ、それって凄い・・・・・・って、違うよ!!」



何、俺ってば普通に尊敬しちゃってんだよ!にらみ合いをしているさんという人と獄寺くん。放課後に話しかけられたおかげか学校内とはいっても回りに人はいない。これだけがせめてもの救いではあるけれど、やっぱり問題ありまくりだ。それに、どうしてマフィアごっこやりたいだなんて思うんだ!
俺からしてみれば、お願いだからやめてもらいたいと思っている限りなのに、自ら志願するなんて!それも女の子が!!あぁ、もう何がなんだか分からないよ!


「別にたかが遊び良いじゃねぇか、なぁ、ツナ?」
「え、いや、でも、その」


山本、何故俺にふるの?!それも遊びじゃないよ、山本。良い加減に気づいて!!未だにリボーンからの特訓をマフィアごっこだと勘違いしている山本はさんをごっこにいれることに賛成らしい。ごっこじゃないから!ごっこじゃないから俺だって困ってるんだよ!そもそもたかが遊びだったら俺だってこんなに渋ったりしていない。
遊びじゃないから困ってるんだよ!獄寺くんは獄寺くんで断固反対と言い切っているし!


「ねぇ、沢田。駄目なの?」
「10代目、駄目に決まってますよね?!」


だから、みんなして俺にふらないで!!「ボスなんだから、当たり前だろうが」リボーンは俺の心の声を読まないで!!あ゛ぁぁぁ、もう本当にどうしたら良いんだろうか。女の子をこんなことに巻き込むなんてことはできない。そうは分かってはいるものの、さんの悲しそうな表情を見ると駄目だと言い切ることができない。俺の意気地なし!
・・・・・・いや、それは分かってたことだけど!!痛くなってきた頭をかかえこみながら、あー、やら、うーやら声を上げる。言い合いしている獄寺くんとさんに山本がフォローにならないフォローをいれている。


「・・・・・・どうしよう、リボーン」
「俺は知らねぇぞ。お前が"ボス"なんだからな」


そういってニヤッと笑うリボーン。お前絶対面白がってるだろ!そもそもさんあなんでマフィアごっこにいれてくれなんていったんだろう。山本とは知り合いらしいけど、俺と獄寺くんとは一切面識が無かったと聞いた。
なのに、どうして?いきないこんなこと言ってきたんだろう。


「えっと、その・・・・・・さんは何で、マフィア・・・・・・ごっこに入りたいのかな?」


さすがにマフィアに入りたいのかな?なんて聞けるわけ無く、一応ごっことつけてみた。実際はもちろんごっこ遊びではない(むしろ、ごっこ遊びだったらどれだけよかったことか!)
俺の言葉にさんはニコッと笑みをつくり、待ってましたといわんばかりの表情を作る。


「だって、みんな楽しそうなんだもの!沢田も山本も!それにあの獄寺まで楽しそうに笑ってたら、気になるじゃない」


あの獄寺!獄寺くんを、あの呼ばわり!!でも、さんが言わんとせんことは分からないこともない。獄寺くんは学校では笑うことなんてほとんどないし、いつだって怒ってるような表情だ。確かに獄寺くん、最近では笑うことが多くなったんじゃないかと思う。



それにしても、俺も楽しそうに笑っていたんだ。



いつも嫌々やってると思ってた特訓。それなのに周りの人からみたら俺は楽しそうにしていたなんて思いもしなかった。でも、今まで友達と呼べる人なんて一人もいなかった俺に獄寺くんや山本という友達ができて前より笑顔をうかべる回数が増えたのは間違いない。


「そんなに楽しそうにしてた?」
「うん。私、楽しいこと大好きなの!!ね、だから良いでしょ?仲間にいれてくれない?」


いれてくれない?と聞かれて、思わず頷いてしまいそうになるが、やっぱり駄目だ。女の子を危険な目にあわせるわけにはいかない。
俺はボスになる気なんてまったくもってないけれど、もしもマフィアなんかになったときさんまで巻きこいかねない。やっぱり駄目だ!そう思って口を開こうとすればそれよりも早く今までほとんど口を開かなかったリボーンが言葉を紡いだ。


「よし、。お前は今日からボンゴレファミリーだ」
「え、本当?!やったー!!」
「リボーンさん、何言ってるんスか?!本気ですか?!」
「あぁ、本気だぞ」

ちょっと、リボーン!何言っちゃってんのぉぉぉ?!


あぁ、やっちゃってくれたよ、この野郎!リボーンの奴俺の意見なんて初めから聞くつもりなんてないじゃないか!!誰だよ、さっき俺が聞いた時はお前がボスなんたら言ってた奴は!!・・・・・・リボーンだよ!!なのに、なんでリボーンが俺の意見を無視してさんがファミリーにはいること決めちゃってるんだよ!
だけど、今更すごく嬉しそうに笑うさんに俺は何も言えなくなってしまい、喜んでいるさんと山本につっかかっている獄寺くんを横目に俺はため息を零していた。
ファミリーが一人増えてしまった。本来なら喜ぶべきことなんだろうけど、素直に喜べはしない。

まぁ、でも・・・・・・ちょっと、ほんのちょっとだけ、嬉しいと思ってしまった俺はいつの間にか口端を僅かにあげて、笑っていた。






(2009・04・19)
わいわいぎゃあぎゃあしてる……?自ら厄介事にとびこもうとする子は初めて書きましたが、凄く楽しかったです^^


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