昔、昔あるところに可愛らしい女の子がおりました。その少女は父親が死んでからと言うもの継母や義姉に苛められる日々。しかし、それでも健気に暮らしておりました。その少女の名を、雲雀、と言いました……すみませーん、これ台本間違ってるんじゃ?え、間違ってない?あ、すみません。
いや、でもこれシンデレラですよね?シンデレラって、少女でしたよね?雲雀さんって男じゃ……気にするな?いや、これは気になるって、うん、分かった。気にしないから、銃をこっちに向けるのやめてくれないか、な!!って、ナレーター交代?やだよー、一番楽だと思う役なのに。って、私に拒否権なんかないのね。わかった、じゃあ、ツナ後はよろしく!って、俺?!えーっと、じゃあ、そのヒバリと呼ばれた少女に(うわぁぁ、ヒバリさんを呼び捨てしちゃったよ!)ある日、一通の手紙が王子がいる城から送られてきました。もちろん、ヒバリの二人の義姉にもです。
その手紙には、城で王子のお妃を選ぶための舞踏会をする、と言う内容が書かれていました。
「なんで、俺が義姉役?めんどい……」
「しょうがねーびょん。骸さんがいったんらから」
「こら、犬!骸さんじゃないでしょう!お母様と言いなさい!千種も、もっとやる気出しなさい!明日は舞踏会ですよ!って、なんで僕が継母役?!このセッティング可笑しくないですか?!普通ここは、僕が王子役で、シンデレラがで、僕達は運命的な出会いを果たすんじゃないんですか?!本当可笑しすぎると思うんですが!」
「煩いよ」
「シンデレラ……!君はさっさと廊下を掃いてしまいなさい!」
「はっ」
継母の言葉に鼻で笑うシンデレラ(これのどこが健気なのー?!)その事に継母は顔を真っ赤にさせながら「君を明日の舞踏会には連れては行きませんからね!」と声を荒げながら言い放ちました。
しかしシンデレラはその言葉に気にした様子も見せずに「草食動物が群れているところになんて行かないよ」と言い、廊下を掃くこともせずに部屋からでていってしまいました。まったくもって話が進まないにも程があります。だけど、どうせシンデレラが舞踏会に行くことになるのは分かりきったことです。なぜなら……そうしないと話が進まないからです(こんな台本で良いのよ!読んでて疑問ばかりだよ?!)
「では、シンデレラあとは任せましたよ」
「さっさと行ってきなよ。そして、一生帰ってこないでね」
「クフフ、4時間後にはしっかり帰ってきますよ」
「……骸様、遅れます」
「こら、千種!お母様でしょ!」
「骸さーん、遅れますよー?」
「……もう良いです。」
いくらたってもお母様と呼ばない姉二人をひきつれて、継母は舞踏会が開かれる城へと馬車を走らせました。シンデレラは、と言うと口うるさい継母がいなくなり欠伸を一つ零していました。
どうせやることもないし、寝てしまおうか、と思ったときに、一羽の黄色い鳥がシンデレラへと近づいてきました。継母と義姉に苛められているシンデレラがとても大切にしている一羽の鳥。友達のいないシンデレラにとっては大切な友達、でもありました(鳥が友達って……)(、睨まれるよ!)その一羽の鳥がシンデレラの名前を呼べば、シンデレラは普段では絶対しないような穏やかな表情を浮かべ「お腹でもすいたかい?」と鳥にたずねていました。
しかし、もちろんその質問に黄色い鳥が答えるわけもなく、鳥はシンデレラの肩へと止まりました。そして、次の瞬間後ろから人の気配を感じ、シンデレラは勢い良く後ろを振り返りました。その手にはどこからだしたのか銀色に光る、トンファーが握られていました。
「よっ、恭弥」
「……」
振り返ってみた先には、金髪の一人の青年が立っていました。それも初対面のはずなのに自分の名前を口にしています。それも、名前を。へらへらと笑っている表情に僅かに、イライラを募らせているシンデレラにその金色の髪をした青年は気づいていません。
「あなた、誰?」
いきなり自分の背後にいた青年にシンデレラの警戒心がつよくなります。ここまで近くにいたとに自分が気づかなかったなんて、とは思っていれば青年は「俺はディーノ。魔法使いだ」とはっきりと言いました。
……この男、頭は大丈夫だろうか。
シンデレラがそう思うのも無理はないでしょう。自らを魔法使いと名乗った男は、手には鞭、緑色の上着に、中は黒のTシャツ。何処からどう見ても、魔法使いの服装には見えません。
それに、シンデレラは魔法使いを信じるような人柄でもありませんでした。
「精神科でも紹介してあげようか?」
「いやいや、何言ってるんだよ?!俺は、本当に魔法使いだ!」
そんな自信満々で言われても。そんな魔法使いにシンデレラは相手をするのも煩わしくなってきました。トンファーを握る手に力をこめて、目を細めて相手を見やれば、相手もそのシンデレラの殺気にきづいてか、笑うのをやめて真剣な表情へとしました。
「まぁ、そんな顔すんなって。ほら、じゃ、時間もないしさっさと城へ行く準備するぞ」
「面倒臭いから、僕はいかない」
いつの間にか義姉の口癖がうつっているシンデレラを無視し、魔法使いは鞭を振り回して何か唱えています。これは他の人から見たら、きっと危ない絵にうつっていることでしょう。しかし、ここにいるのはシンデレラと魔法使いだけ。ツッコミがいない今、彼にそのことを伝えてくれる人は誰一人としていないのでした。
魔法使いが鞭を振るたびに、色々なものがあらわれます。かぼちゃの馬車。それを引く、馬。そして、最後にはとても美しいドレスに身を包まれたシンデレラがそこにはいました。シンデレラも呆然としながら自分の格好を見ています。
「よし、じゃあ、行って来い」
シンデレラに反論させる間もなく、魔法使いは馬車にシンデレラを突っ込むと、馬車を城へと走らせました。遠くなる馬車を見ながら、魔法使いは12時になったら魔法がとけるぞ!と叫んでいました(言ってから馬車を走らせてれば良いのに……)
その頃、城では一人の王子がつまらなそうに自分のためにあつまった妃候補を見ていました。何故、自分が。王子の前に、女だ、と叫びだしたい気持ちを何とか抑える姿はとても涙を誘うものがあります。可哀相な王子。同情するなら役を変われ、と言い出しそうな王子は、名前を、、と言いました。
「私、女なんですよ。王子って普通男じゃないですか。これって遠まわしにお前は男だって言われてるんですかね?」
「……諦めろよ」
「良いよね、獄寺は!従者Bなんて、役どころでさ!!正直、うらやましいよ!っていうか、ナレーター役が良かったよ!それにあんたのほうが顔が王子っぽいんだから、王子やれば良いのに……!」
「テメー、誰が王子なんてやるか!!」
「ははっ、二人とも面白いのな!」
「「面白くねぇよ!!」」
従者の二人に励まされ(どこが?!)王子は妃候補を見渡し、ため息を零しました。さすがにそれには同情を覚える従者の二人。しかし、従者は従者。王子に何かをしてあげることなんてできませんでした。
王子だって、自分の運命は分かっているのです。しかし、納得はできませんでした。
「私、女じゃん……!」
「どうせ、ここに集められたのは男なんだろ?じゃあ、気にする必要なくないか?」
爽やかな笑顔を浮かべる山本に、王子はそういう問題じゃない、と内心悪態をついています。
「それに、私王子なんてキャラじゃないし、可笑しいと思う。なんで、ここで山本や獄寺が王子じゃないの?これって配役ミスじゃない?」
「ははっ、俺男はちょっとなー」
「今日も見事な黒かよ!!お前、ちょっと爽やか系のプライドくらい持てよな……!」
「いやぁ、でも、世の中、白より黒って奴が「お願いだから黙れよ!!」」
「俺だって、王子なんてやりたかねぇよ」
「でも、獄寺、昔城にすんでたって聞いたよ。かなりの坊ちゃんじゃん。なら、王子役もできるって!!」
「どんなにおだて様がやらねぇぞ」
「じゃあさ、もし自分が王子で、シンデレラがツナだったらやりたいでしょ?」
「て、テメー!!」
獄寺くんはそういいながら、ダイナマイトを取り出しました。王子はそれを見ると顔を真っ青にさせて、従者の一人に落ち着け、と連呼しながら、謝っています(……シンデレラってこんな話だったけ?)そんな王子の近くに3人の、ドレスを身にまとった人が近づいてきました。王子と従者は、驚きながらその3人に視線をやりました。
「初めまして、王子」
「あ、どうも、です。……ちょ、獄寺どうしよう!人来ちゃったよ!こんな平凡な王子無視してくれるって思ってたのに来ちゃったよ!」
あわてだす王子に近づいてきた輩(あれ、ツナ?黒いよ?)(そうかな?)(あれ、ついにツナも黒になっちゃうの?!)は動じた様子も見せずに、にっこりと微笑みました。一応、王子は一国の主。ひきつりながらも、笑顔を返し「初めまして」と言いながら挨拶をしました。
「クフフ、初めまして。僕は骸、と言います」
その輩は王子の手をとると、ゆっくりのその手の甲にキス(ちょっと、読んでる俺も恥ずかしいんだけど!)をしました。その動作に、その場にいた全員が固まります。しかし、王子はすぐにその手を払うと、自分に鳥肌が立っていることに気づきました。
「ほら、手。消毒しような」
「俺、アルコール借りてくるわ」
「僕に酷すぎませんか?」
山本はハンカチを手に持ち、キスをされた王子の手をとり、獄寺くんは消毒のためのアルコールを貰いに、行こうとしました。そこでやっと王子の意識は戻り、目の前の、骸を睨みつけました。
「何するんですか!貴方、継母役ですよね?!こんなことして許されると思ってるんですか?セクハラ、でうったえますよ!!ちゃんと、自分の役くらい把握してくださいよ……!」
「ちょっとしたおちゃめですよ。それにしても、これだけでそんな反応されるとは……クフフ、もウブですねぇ」
「…骸様、その辺にしていた方が」
「俺、知らないびょん」
「はは、王子。お前は妃探ししないといけないんだろ?ここは俺にまかせておけよ」
「え、ちょ、なんですか?!あの、それって、刀ですよね?!え、ちょ――――
王子はその場を山本に任せると嫌々ながら、妃探しを始めました。もちろん、アルコールを貰ってきた獄寺くんに消毒をしてもらって。王子は辺りを見渡しながら、妃にふさわしい人物を探していました。しかし、そんな簡単に見つかるわけもなく王子は足をとめ、その場でため息を一つ零しました。
話もしないで、見つかるわけがない。
そんなことを思っていれば、山本が骸に制裁をくだし終わったのか爽やかな笑顔で王子の肩を叩きました。王子はそれに驚きながら、振り返り、山本を見上げました。
「どうだ、見つかったか?」
「ううん」
「そっか……って、あいつなんて良いんじゃないのか?」
山本はそう言うと、視線を一人の少女(……少女、じゃないよね?)にやりました。王子もそれにつられ、その視線のほうを向き、思わず目を見開いて驚きました。視線の先にいる少女は、真っ黒なつややかな髪、そして、真っ白な肌、とてもこの世のものとは思えないほど綺麗な少女がそこにはいました。
「うわー、カワイイヒトダー」
「よし、声をかけて来い」
「はぁ?!いや、なんで?!」
「そうしないと話が進まないだろ?」
まるで運命の人に会えたんじゃないかと思うほどに、王子の心はその少女に奪われていました(いやいや、そんなこと私一言も言ってないよね?!むしろ、棒読みじゃん台詞!)しかし、今まで恋なんてものをしたことがない王子はどうして良いのか分からず、思わず、手を握り締め、ただその少女を見ることしか出来ませんでした。
けれど、そんな王子の肩を押したのは小さい頃から、一緒だった従者の一人でした。従者のその励まし(あれは脅しって言うんだよ!)に、王子は息を飲み、ゆっくりと少女の方へと歩き出していました。
「(言わないと終わらない。言わないと終わらない)お、お嬢さん、一緒に踊りませんか?」
「何、君。咬み殺されたいの?」
「……デスヨネー」
少女は王子の顔を見もせずにこたえました。断られたことに僅かに傷ついた王子でしたが、それでも初めて自分が恋しいと思った少女を目の前に引くことなんてできるわけがありません。
「頑張れ、王子!」
「……その、負けんな」
従者二人も王子を遠くから応援しています。王子はそのことに答えるかのように、二人に視線をやりました。
「はは、めっちゃ睨まれてるのな!」
「そうだろうな」
「(人事だと思いやがって……!)」
王子は意をけっし、再び少女に話しかけます。
「お願いします。本当、お願いしますから一緒に踊ってはいただけないでしょうか?!いや、別に無理なら断っていただいて結構なんですが、むしろ本音としては断って欲しいのが山々なんですが、あの、踊ってください……!」
「の奴……泣いてるぞ」
「それだけ踊りたかったんだろうな!」
王子のあまりの熱心な説得に、少女は、煩わしく感じながらも王子のほうに視線をやりました。少女は、まっすぐと王子の顔を見ます。二人の視線がその瞬間、交わり、時がとまりました。
「君は……」
「は、はい?!」
しかし、そこで無情にも城内には、12時を示す鐘の音が鳴り響きました。その事にハッとした、シンデレラは名残惜しさを感じながらもその場を走り出していました。王子も思わずその後を追いかけますが、ドレスを着ているというのにシンデレラに王子が追いつけることはできませんでした。
「ま、待ってください!」
階段をくだっていく、シンデレラを王子は大声で呼び止めました。その声に、シンデレラは立ち止まり振り返ると王子をみあげ、口端を僅かにあげ、微笑みました。
「(恐ぇぇぇぇ!!)」
王子はその表情に、思わず見とれ、走り出したシンデレラを追いかけようとしたときには既に、シンデレラはその場からいなくなっていました。王子はゆっくりと階段をおりながら、シンデレラの去っていた方に視線をやりますそして、ふと視線を下にやれば、そこに落ちているのは一足のガラスの靴。多分、シンデレラのものであろうと、王子はそれを手に取り、急いで従者二人のもとへと戻りました。
この靴があれば、またあの少女に会えるかもしれない、と。期待で胸を一杯にしながら。
「(むしろ、不安で胸いっぱいだよ……)」
「じゃ、早速探しに行くか?」
「いや、私そんなこと一言も言ってなくない?このままでよいよ。私の運命はここまでだったんだよ!」
「それ、自信満々にいう台詞じゃねぇよ」
「探しにいかねぇと、終わらないぜ?」
「……探しに、行こうか」
王子と従者はシンデレラの置いていったガラスの靴を頼りに、町中の少女にその靴をはかせあの少女を探していました。そして、いつの間にか最後の、一軒となり、王子は高鳴る胸を落ち着けながら、その家の目の前に立ち尽くしました。
「もし、ここにいたらどうしよう。プロポーズとかしないといけないわけ?っていうか、プロポーズなんてしたら私殺されちゃうんじゃいの?いや、本当、ここにいたらどうしようかな。それに、こんな探し方よりもっと効率的な探しかたがあったんだと思うんだけど、っていうか、まじでここにいたらどうしよう……!」
「(別の意味で胸が高鳴ってるみたいだな!)」
「その……落ち着けよ」
息をのみ、王子はゆっくりとそのドアをノックしました。開かれるドアの向こうから見える見覚えのある顔。ドアが開いた瞬間、二人の従者は王子の目の前に立ち、そのドアをあけた人物に持っていた武器を向けていました。
「ちょ、君たち!開けた瞬間これってどういうことですか!」
「はは、条件反射ってやつだな!」
「笑顔で言うことと違いますから!……まったく、今日は一体何のようです?」
「貴方に用は無いのは確かですね」
「王子も酷いですね!」
「お前の娘を出せ」
「えっ?!僕の娘を?!そんな……!」
「何勘違いしてるかしらねぇが、さっさとださねぇと、果たすぞ?!」
「ぼ、僕じゃ、代わりにならないんですか?!」
「お断りなのな!」
「あ、えっと、千種くんと、犬くん?この靴はいるか、ちょっとしてもらってよい?どうせ二人があの少女じゃないのは分かってるんだけど、って言うかぶっちゃけ誰かは分かってるんだけど、一応話の流れ的にお願い」
「めんどい……けど、まぁ、しょうがないか」
「分かったびょん」
「……僕のことは無視ですか」
結局ガラスの靴は誰にあうこともありませんでした。王子はそれはそれは落胆しましたが、これも運命だと思い諦めました。
「うわー、誰ともこの靴あうことなかったよ。」
「それはそれで凄いですよね。それサイズなんなんですか?」
「一般的なサイズだと思うんですけどねー。ま、しょうがないよね!帰ろう、獄寺、山本!」
「(これのどこが落胆してんだ)」
「はは、もう少し落ち込んだように見せようぜ」
「だってー、嬉しくてたまらな「誰?」」
その場に響く凛として声。それは王子がここ数日間捜し求めていた、あの少女の声とまったく一緒でした。その場にいた全員が少女の方に視線をやります。舞踏会のときのような綺麗なドレスではなく、みすぼらしい格好をしている少女。
しかし、真っ黒な黒い髪、そして、真っ白な白い肌。それは紛れもなくあの少女のものでありました。
「シンデレラ!一体、君は今まで何をやってたんですか。頼んだ仕事もしないで」
「寝てた……で、何群れてるの?」
「いや、あの、これは……」
「君はあの時の、」
少女の視線が王子にそそがれます。
「あの、えっと、これを履いてもらえないでしょうか?」
王子のその言葉に(普段なら考えないことですが)少女は、その言葉に従いガラスの靴をはきました。靴はシンデレラにぴったりでした。
「うわー、シンデレラ見つかっちゃったよ。あぁ、もうこれなら千種くんと犬くんに靴を履いてもらった瞬間にかえればよかったんだ。だらだらと残ってたもんだから、出てきちゃったし」
「良かったな、王子!」
「よくねぇよ……うわぁぁぁ、どうしよう。この展開ってプロポーズ?!プロポーズなの?!」
「何、ぶつぶつ言ってるの?だけど、君が会いに来てくれた良かったよ」
え、と思い王子が頭を上げた瞬間、王子の横をトンファーがつきささっておりました。普通、ここでシンデレラと王子は幸せに暮らしましたとさ、の展開を予想していたメンバーは全員、息を飲みました。何故、シンデレラが王子に、トンファーを投げつけているのか。
「ちょ、ちょ、ちょ、なんですかこの展開!?」
「はは、何でもありなのな!」
「……家、壊れるのは」
「千種くーん?!そっちの心配ー?!」
「そうですよ!王子、大丈夫ですか?!」
「変態はお断りです」
「(そんな真顔で……!)」
「チッ、果たすぞ、テメー!!」
ダイナマイトを構える従者。そして、トンファーを構えるシンデレラ。なんだ、このシンデレラは、と王子は一人頭を抱えています。
「会った瞬間から、咬み殺してみたいと思ったんだよ。君、強そうだからね」
確かに王子は小さい頃から一国の王子としてありとあらゆる武術を学んでおりました。それを一瞬で見破ったシンデレラは、トンファーを構えながらじりじりとこちらのほうに近寄ってきます。王子は従者二人の陰に隠れながら、シンデレラに視線をやりました。口端が僅かにあがり、トンファーで風をきるその姿。
そして「君たち二人に用はないんだよ」と、自分の都合を突き通すのを見て、王子はある意味この人は女王様だと感じていました。
「まだ、私には、妃は早いよ……」
戦い始めるメンバーを遠い目で見ながら王子はまたため息を零しました。そんな王子の肩を、ぽんっ、と誰かが叩き王子はその自分の肩を叩いた人物のほうを振り返りました。
「何、しけた顔してんだよ」
「魔法使いさん」
王子の横へといきなり現れたのは、あのシンデレラが城へと行くきっかけをつくった魔法使いでした。魔法使いはいつものようにキラキラした笑みをうかべながら「俺が城へとやったシンデレラ、はどうだった?」と王子に聞きました。
その言葉に、すべてはこの人が原因か、と魔法使いを見上げました。しかし、原因と分かっているのに責める気持ちにはなりません。それも、きっとこの魔法使いの人の良いキラキラした笑顔のせいでしょう。怒る気のうせた王子は「まぁ、私に結婚は早いと改めて思いましたよ」と投げ捨てるように言いました。
「そうか?俺は良いと思うけどな」
「いやいや、そんな事無いですよ。むしろ、あってたまるかっていう気持ちで一杯ですよ」
「なら、」
魔法使いはそう言うと、王子の頬に唇を寄せました。あまりに咄嗟のことで反応できない王子の頬に唇を押し付け、そして耳元に唇を移動させると「俺なんてどうだ?」といつもより低い声で呟きました。
「な、何やってるんですか、君たちは!」
「咬み殺す……」
「はは、ちょっと調子に乗りすぎなのな」
いつの間にか、こちらに注目していたメンバーに、今のを見られた、と思った王子の顔は一気に真っ赤になっていました。魔法使いはそんな王子を横目に、鞭を取り出すにっこりと微笑むと王子の肩を抱きます。
「今回は俺の勝ちだな」
(いやいや、シンデレラで魔法使いが勝ったらダメだと思うんですけどー!!)
(ったく、これの何処がシンデレラなんだ?)
(クフフ、輪廻の果てにご招待しましょうか)
(次はアリスでもやってみるか)
(絶対嫌だぁぁぁ!!)
(2008・09・24)
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